一日ドクトリン

高崎とおるの諸々を書き連ねたいと思います。
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 「お嬢様が、いけないことをたくらんでいます」の諸々の理由で削除されたシーンを含む原稿です。

 詳細はFBonlineでよろしく!
 特集も組んでもらってますので、ぜひぜひ(20010930現在)


■初期は冒頭だった部分
 出版されているバージョンだと、そのあとのシーンに混ぜ込んじゃってます。ただ車の中の茅花姫とシグネ(と祥太郎)のイチャイチャシーンは削られてますね。

※推敲が行き届いてない原稿なので、その点、あらかじめご了承ください。また、不適切な表現等ございましたら、削除いたしますので、お手数ですが、ご連絡いただければと思います。
■■■
 新見祥太郎【にいみ しょうたろう】の前に、一通の招待状がある。
 東京湾岸にそびえたつ某高層ホテルの内部、とあるパーティーが開かれるフロアへ、合法的に入りこむために必要な唯一の通行証【パス】だ。
 祥太郎は人生の難問にでもぶち当たったような顔で、目の前の招待状を睨んだ。
 宛名には達筆で『新見祥太郎様』とある。
「うん、大丈夫。間違いない」
 車に乗り込んでから四度目の復唱、最後にもう一度だけ自分の名が記されているのを確認してから、タキシードの内懐にそれをしまう。
 盛装で来てくれという指示に、我が家で最も高価な衣類は七五三で着た袴だと答えた祥太郎のために依頼人が用意してくれたタキシード一式は、着慣れないせいか、やけに窮屈なものに感じられた。
 綺麗に整えられた頭を後部座席のシートに預け、目を閉じる。
『――このパーティーに出席する、とある重要人物の警護をお願いしたい』
 話があった当初から面倒な事になりそうだという漠然とした予感はあった。だから祥太郎としても可能な限りの心構えはしていたつもりだ。
 しかしそれは例の優男、式島【しきしま】塁人【りゅうと】なる男が提示した破格の報酬額から、背後関係の複雑さ、予想される状況の難しさに備えるという類の、祥太郎にとっては日常と化した非日常に対するための心構えである。
 まさか現場に立つ以前に、ドレスコードが最大の難敵として立ちはだかるなぞというどうにも締まらない展開は予想外だった。
 ピカピカに磨かれた革靴は、いざという事態にグリップが利かなそうで心許ないし、タキシードには、使えるポケットが少ないのがひどく不便である。
 これでは手持ちの砂の量が心もとない【←13文字傍点】。
 思わずもれた深いため息に、祥太郎を挟んで左右から声が掛かった。
「……あまり溜め息ばかりついてると、幸せが逃げていくって言いますよ?」
「そんなに何度も確かめなくても、招待状はいきなり消えてなくなったりはしない。安心しろ主人【マスター】」
「もしも落とすのが心配だったら、わたしがお持ちしましょうか?」
「ん? いや、そういうことなら、この私が――」
「シグネちゃんの格好じゃ、しまうところがないでしょ」
「それを言うなら、貴様だって同じだろう」
「あら、わたしならどうにでも【←五文字傍点】なるけど?」
 次第に大きくなるしもべ【←三文字傍点】たちの声に、祥太郎はうっすらと目を開ける。
 ちょうど誇らしげに胸をそらしてみせた茅花姫【つばなひめ】にシグネがムキになって食って掛かるところだった。
 依頼人から送られた高級なドレスで、ハリウッド女優顔負けに飾った二人だが、言い争いの内容はいつもと同じ小中学生レベルだ。
 茅花姫は朗らかな笑顔を浮かべて、自分よりも目線の高いシグネを見上げる。
「だって生まれつきの特性【←二文字傍点】だもん。シグネちゃんは隠すとしたら、その大きくって張りのある胸の間しか、隠すところはないけどね」
 茅花姫に胸を指差され、シグネはパッと一瞬で耳まで赤く染め、あわてて自分の胸をかばうように抱きしめる。
「バ、バカ者。こ、これはそんなことに使うために、こうなったわけではなく……! だいたいそういうことなら貴様だって、その……できるだろうが!」
 具体的な単語を口にすることが恥ずかしいのか、やたらと指示代名詞の多いシグネに慈愛に満ちた表情を向けて、茅花姫は目を細めて微笑む。
「シグネちゃんってば、かぁわいぃ」
「私を愚弄するかっ! 茅花よ、私は貴様のそういうふにゃふにゃした態度が……こら抱きつくな、頬擦りするな、揉むなぁっ!」
「でも、わたしが預かるのが駄目なら、シグネちゃんはここ【←二字傍点】に隠していくしかないと思うんだけどなぁ」
「あ? あ、う……そ、そうだ、主人【マスター】はどう判断するのだっ!?」
 進退きわまったシグネは、茅花姫を首に抱きつかせたまま、必死の形相で祥太郎の膝上に半身を乗り出してきた。
 深緑色のシルクに小粒の黒真珠をあしらったドレスの襟ぐりは深く切れ込み、背中が大きく開いたデザインは、一流グラビアモデルも裸足で逃げ出すシグネの肉感的な体つきと、ぬめるような白い肌を際立たせている。
 すらりと高い長身と肉感的なプロポーションに祥太郎は普段から圧倒されがちだが、さすがに胸の谷間を見せ付けるような格好で乗りかかられたことは、そうそうない。
 対する茅花姫の装いは、襟が高いので露出は少ないが、マーメイドラインのドレスは首筋から膝まで至るボディラインが露骨に浮き上がってしまうので、小柄で華奢なのに胸元だけは反則気味に豊かな彼女が着ると、物凄い破壊力である。
「あ、いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫。でも、ありがとう」
 祥太郎がふたりに笑ってみせると、茅花姫は笑顔で頷き、シグネは納得いかなそうなほっとしたような複雑な顔で、それぞれ祥太郎の右と左に座り直した。
 左右に美しくドレスアップした綺麗どころを侍らせて高級ホテルのパーティー会場に向かうなんて何処のVIPかと思うが、残念ながら祥太郎は、この状況を楽しめる心の余裕も、開き直って現状を謳歌する図太さも持ち合わせていなかった。
 何故ならば、祥太郎がパーティーに向かうのは採用試験【←傍点4字】を兼ねた依頼のためであり、今夜の仕事に失敗すれば、遠からず三人の扶養家族【しもべたち】を抱えて路頭に迷うという、悲惨な未来が待ち構えているからである。
 がくんと車体が揺れて、祥太郎は我に返った。
 車外の風景はいつの間にか流れるのを止め、窓の向こう側にはそれなりの星空を背にそびえ立つ、高級ホテルが姿を現している。
「ついたぞ、祥太郎。お待ちかねの伏魔殿だ」
 三人目の扶養家族、オスカー・フォン・クラウセヴィッツが、運転席から後部座席の主と仲間を振り返って到着を告げた。
 高級スーツの上からでもはっきり分かる均整の取れた体格と、野性味あふれた美貌は、誰かに仕えるよりも、仕えられることに慣れた雰囲気を漂わせている。
 祥太郎は愛する扶養家族【しもべたち】の顔をぐるりと見渡し、深呼吸をひとつして、本日の戦場へ最初の一歩を踏み出す。

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コメント
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明日はその2となります。
2011/09/30(金) 17:11:36 | URL | 高崎とおる #ne3nacQc[ 編集]
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