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一日ドクトリン

高崎とおるの諸々を書き連ねたいと思います。
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 「お嬢様が、いけないことをたくらんでいます」の諸々の理由で削除されたシーンを含む原稿第2弾です。

 詳細はFBonlineでよろしく!
 特集も組んでもらってますので、ぜひぜひ(20010930現在)


■2章の真ん中あたりです。
 猫のシーンが本番では削られてますね。茅花姫が「魚の臭い」の話をしているのは、このへんの名残もありつつです。


※推敲が行き届いてない原稿なので、その点、あらかじめご了承ください。また、不適切な表現等ございましたら、削除いたしますので、お手数ですが、ご連絡いただければと思います。
■■■
 約二週間をかけて互いに手探りでじりじりと歩み寄った結果、現在、星良は茅花姫やシグネと気軽に無駄口を叩ける程度には、距離を縮めつつある。
 星良も、初めのうちは異世界の住人と思って無意識に身構えて接していたふたりが、実は自分とそれほど変わらない価値観の持ち主だと知って肩の力を抜き――
「そもそも、一族の内部で王の命を狙う者が野放しにされているというのが解せんな。片っ端から捕らえて根絶やしにしてしまえばいいではないか?」
 ――油断しかけるたびに、さりげない発言に冷や水を浴びせられるという繰り返しが未だに続いているというのが現状だ。
「根絶やしって……そういうわけにもいかないでしょ」
「そうなのか?」
「人の命が関わることだもの。いくら敵が悪党でも短絡的に物事を処理したくないし、邪魔者だから消してしまおうなんて考えるようになったら、あたしも連中の同類になっちゃう」
 星良の反応にシグネは怪訝そうに眉を寄せた。
 シグネからすれば、ごく単純な論理的帰結なのだろうが、星良とシグネでは属する世界の倫理観も仕組みもまるで違う。
 邪魔なら殺してしまえという感覚は、ごく一般的な倫理観を大事にしている星良には受け入れがたいものである。
 シグネは再び難しい顔で腕を組んだ。
「――陸の生き物は面倒くさいな」
「海底とは違って境界線が山ほどあるから、その分だけ面倒くさいのかも。ねぇ?」
 星良の同意を求めるように茅花姫が笑う。
 星良の顔を覗き込もうと首を傾いだ瞬間、しゃらりと茅花姫の首にかかっていた銀の鎖が鳴った。
 茅花姫が常に肌身離さず身に付けているペンダントのトップには、蔓薔薇に抱かれた西洋の城を象った精緻な銀細工がぶら下がっている。茅花姫は時間を見つけては、このミニチュアの銀の城を丹念に磨いているようだった。
 初めて手入れの現場に出くわしたとき、星良がきれいだとほめると、茅花姫はまるで自分をほめられたように頬を染め、喜んでいたことを思い出す。
 もしかすると茅花姫にとって大切な思い出の品かなにかなのかもしれない。
「茅花、そのお城って……」
 星良の問いかけを遮るように前方の植え込みが、ガサリ、と音を立てて揺れた。
 思わず星良が身を強張らせて立ち止まり、星良の左右を歩いていた茅花姫とシグネが素早く星良をかばって身構える。
 ――が、緑の葉陰から凄まじい勢いで飛び出してきたのは、星良の命を狙う暗殺者や卑劣な誘拐犯などではなく、一匹の三毛猫だった。
「捕まえてください!」
 遠くから切羽詰った女子の声が飛んでくる。
 シグネはさっと身をかがめ、一同の前を猛スピードで駆け抜けようとしていた三毛猫を捕まえた。
 シグネは慣れた手つきでひょいと猫を腕に抱えあげる。三毛猫はおとなしくシグネの腕の中におさまり、ほどなくぐるぐると低く咽喉を鳴らし始めた。
「すみません、ありがとうございます!」
 息を切らして女生徒たちが駆け寄ってきた。必死で植え込みの間を走ってきたのか、乱れた髪に葉っぱがついている。
 シグネは女生徒たちから抱き上げた三毛猫に視線を移して、軽く眉を顰めた。
「怪我をしているのか」
「はい、消毒していたら逃げてしまって……」
 三毛猫の前足には血のにじんだ傷と、手当ての痕跡が残っている。興味深く腕の中を覗き込んでいた茅花姫がやわらかい口調で訊ねる。
「ふたりで飼ってるの?」
「いえ、飼っているわけではないんですが、よくエサをあげていて」
「野良みたいで、あまり慣れてはいなかったのですが、怪我を見つけてしまったので、放っておくわけにもいかないと思いまして……」
「そうか」
 シグネは女生徒たちの説明に納得したように小さく頷いた。
 そして、抱えた三毛猫を近いほうに立っていた女生徒に渡すが、猫は女生徒の腕からするりと逃れて、そのまま植え込みの向こうに姿を消す。
「あっ……」
「大丈夫だ。道路に向かって走っていないなら、問題ない」
「うん、骨は平気だったみたいだし、あれなら自分で舐めて治すよ」
 シグネと茅花姫の言葉に、女生徒たちはホッとしたように表情をゆるめた。
「そうですね」
「あの、猫の扱い、お上手なんですね」
 突然の褒め言葉にシグネは面食らったように瞬き、それから照れたように頬を染めて咳払いをする。
「そ、そうか?」
「はい、惚れ惚れするようなお手際でした」
「よほど扱いなれていないと、ああは行きませんよ」
「ほんとに猫がお好きなんですね」
 ニコニコと女生徒たちが口にする言葉に、シグネは照れながら首をひねる。
「ん? いや、特別好きというほど好きなわけでは……」
「あら、この間も黒猫といっしょにいらっしゃいましたよね?」
「そうそう、黒猫に話しかけておられるのをよくお見かけしていました」
「仲良しさんなんですね!」
「…………」
 憮然とした顔で黙り込んだシグネの横で、茅花姫が堪え切れずにぷっと吹き出した。茅花姫はギッと睨みつけるシグネの鋭い視線を受け流し、笑顔で女生徒たちに訊ねる。
「シグネちゃんとおしゃべりしてた猫、かわいかった?」
「ええ、とっても」
 そのまま猫談義に雪崩れ込みそうな雰囲気だったのに、女生徒のひとりが、通用門の近くに停まった車に気づくと、すぐに頭を下げた。
「すみません、お引止めしてしまって」
「あ、別に急いでるわけじゃないから」
 星良は焦って首を横に振ったが、女生徒は本当に申し訳なさそうに眉を下げる。
「お気遣いありがとうございます。ですが私が、星良様のお時間を無駄にさせてしまうことはできませんので」
「それでは失礼いたします」
 ぺこりと頭を下げて、女生徒たちは足早にその場を去った。
 星良はふたりの背中が校舎の向こうに消えるのを見送ってから、内親王に訊ねる。
「――あの子たちって、式島の関係者?」
「お話したのは、上州吉井家の紀美さん、矢田家の真里香さんですね」
 データを読み上げるように飛び出した名前に、星良はため息を吐く。
 同じクラスでもないのに見覚えのある顔だと思ったら、パーティーで何度か見かけた分家に仕える家の娘たちだったらしい。
「あー、せっかく一瞬お披露目のこと忘れてたのに、思い出しちゃったじゃない」
 憂鬱そうに頭を振る星良の様子を見て、内親王はかくりと首を傾がせる。
「もし星良がも気を紛らわしたいのでしたら、なにか余興でもいたしましょうか?」
「なしのが余興? どんな?」
「もちろん“円周率八万桁の暗唱”です」
「……それって終わるまでに何時間かかるの」
 星良はがっくりと肩を落とした。
 お披露目の会に出るより、内親王が円周率八万桁をそらんじるのを聞いているほうが遥かにマシだが、まさか星良自身がお披露目の会から逃げ出すわけにもいかない。
 今日のお披露目が成功するか否かで、今後、式島内部における祥太郎としもべたちの立場や動きやすさは大きく変わるのだ。
 当主が自信を持って紹介できない護衛なんて、どんな評価を受けることになるかわからない。
(あたしのことは祥太郎たちや内親王が守ってくれるけど、祥太郎たちを守れるのは、雇い主であるあたしだけなんだから)
 胃の痛みを堪えて顔を上げ、迎えの車へ近づく星良に、茅花姫が小走りに駆け寄る。
「ねえ、星良ちゃん、どうしても避けられない嫌なことが待ってるときは、そのなかでひとつでもいいから楽しいところを見つけるといいよ」
「……ちょっと難しいかも」
「う~ん、そっかぁ。じゃあね、ええっと……嫌なことを終わらせたあとに、なにか楽しみなことをひとつ用意しておいて、それを励みに我慢してみるっていうのはどうかな?」
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