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一日ドクトリン

高崎とおるの諸々を書き連ねたいと思います。
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 「お嬢様が、いけないことをたくらんでいます」の諸々の理由で削除されたシーンを含む原稿第3弾です。

 詳細はFBonlineでよろしく!
 特集も組んでもらってますので、ぜひぜひ(20010930現在)


■5章の末尾にあったシーン
 説明がくどくなっているのと、種明かしを先にしちゃうのって、どうよ?というのが削除理由です。
 貝殻の水着のくだりは何とか本番でも差し込んでますが、こっちのほうが好きではあります。

※推敲が行き届いてない原稿なので、その点、あらかじめご了承ください。また、不適切な表現等ございましたら、削除いたしますので、お手数ですが、ご連絡いただければと思います。
■■■
「――いったん、夕食にしませんか?」
 茅花姫の暢気な提案に星良は顔をあげた。見れば時計はいつの間にか二十時を回り、外には満天の星空が広がっている。
「ああ、もうこんな時間かぁ……」
 星良はため息をついてソファの上でのびをする。乗鞍の脅迫――星良としては絶対にあんなものをプロポーズとは認めない――から数時間、いまだに決定的な打開案は出ていなかった。
 しかし、このまま煮詰まっていても、いいアイデアなど浮かびそうにない。
「そうね。食事の時間にして、頭を切り替えたほうがいいかもしれない」
 ありがとう、と茅花姫に助言の礼を言い、階下のレストランに出かけるか、それとも部屋に運んでもらうように頼むか、意見を聞こうとしたところで祥太郎が止めた。
「いや、ちょっと待って。状況だけでも整理しておこうよ」
「なにか気になることでもあるの?」
「……うん。なんか出てきそうな気だけはするんだ」
 祥太郎はいつものように眉間に皺を寄せて、革張りのソファの肘掛に腰掛けている。これは久々に再会して発見した祥太郎の癖のひとつだ。
 なにか考え事をしているとき、ちょっと気がかりなことがあるときに、祥太郎は良くこの姿勢を取る。星良と離れ離れで過ごした四年間で身についた癖なのだろう。
 以前、どうして普通に座らないのだろうかと不思議に思って訊ねた星良に、祥太郎は上等すぎる椅子に座ると眠くなっちゃうからと頭を掻いて笑った。
 その時は素直に祥太郎の説明を信じた星良だが、護衛として行動を共にするうちに、祥太郎が肘掛に座る最大の理由は、敵が現れたときに即座に動けるようにするためではないだろうかと思い至った。
 祥太郎には、この手のいわば“戦慣れ【いくさなれ】”している部分を、星良に対しては可能な限り隠そうとする節がある。
 星良からすれば、祥太郎が自分に隠し事をするということ自体がショックだったし、壁を作られることには不満も覚えたが、昔と変わってしまったところを見せたくない、見られたくないのかもしれないと思うと文句は言えない。
 星良にも“金持ち慣れ”してしまった自分を祥太郎には見せたくないと思う気持ちはある。派手なドレスを着て金持ち連中を相手に愛想笑いを浮かべる姿も、嫌味の応酬で戦う姿も、できれば祥太郎にだけは見られたくない。
 外見や立場が変わった今も、星良が祥太郎の幼馴染みのままでいたいと思うように、祥太郎は星良に自分が優しい幼馴染みのままだと思ってほしいのかもしれない。
(……でも今は幼馴染みであると同時に、あたしの護衛でもあるわけなんだし、そういうプロフェッショナルな部分を見せても構わないんじゃないの?)
 考え込んでいる横顔に、心の中で語りかけていた星良は、祥太郎がくるりとこちらに向き直ったので、うっかり声に出してしまったかとあわてたが、
「ようするに飛鳥井さんや技術者たちは、星良に対する人質なわけだよな」
 祥太郎が、ゆっくりと一つ一つ状況を整理し始めたので、ホッとして頷き返す。
「乗鞍は彼らを人質にするために今回のリゾート計画を思いつき、その計画に従って、彼らの会社を乗っ取り、この島に呼び寄せた、と」
「よりによって、あたしと結婚するため、なんてくだらない理由でね」
 怒気を孕んだ星良の補足に、祥太郎は硬い表情で頷く。
「おそらくその計画の一環だろうが、乗鞍は島から人質たちを簡単に逃さないように、移動手段を制限している――そうだったね?」
 祥太郎は昨夜から島内の調査に出かけていたオスカーと茅花姫に確認を取る。
「ああ、この島は浅瀬に囲まれてるから大量輸送できそうな大きな船舶は近づけねえ。港はあるにはあるが、そもそも設備が乏しいし、停泊している船の数も少ない」
「島から見える陸地は滑走路がある小島だけですね。でも、その小島も泳いで渡るには距離がありますし、海中は危険な海洋生物がうじゃうじゃいます」
「うん。敵を褒めるのもなんだけど、非常にうまくできてるよ。滑走路も小さいから、俺たちが乗ってきたチャーター機程度の中型機しか着陸できないしね」
 祥太郎が本気で感心したように敵を褒めるのを見て、星良はあわてた。
「ちょ、ちょっと、じゃあ、あたしは結婚するしかないってこと?」
「いやいや、まだそう結論付けるのは早いって」
「式を挙げてすぐに離婚すればよいのではないのか?」
 シグネの意見に星良は恨めしそうな目を向ける。
「――式島家がそんな簡単にできてたら、あたしだって苦労しないわよ」
 式島家当主である星良が誰かと婚姻関係を結んだ時点で、式島家には新しく、様々な利害関係が発生することになる。
 式島内部の権力地図は一変するだろうし、その影響で傍系もいくつか潰れて、一人や二人の人死にではすまないくらいの混乱が発生するだろう。
 それを「相手が気に入らないので白紙に戻します」というわけにはいかない。
 現在は星良の意思を最大限に尊重し、色々と便宜を図ってくれている塁人でさえも、星良が乗鞍と結婚すると決め、覆せそうにないとわかった時点で、結婚後の立ち位置の確保に動き始める。
 そして、星良が結婚した後には、新たに確保した権力と立ち位置を保持するために、絶対に星良の離婚を許すことはないだろう。
「ならば、乗鞍を殺してしまえばいい」
 シグネはあっさりと言い放った。涼しげな美貌には躊躇のかけらも見当たらない。
「殺すって……、そういうわけにもいかないでしょ」
「そうなのか?」
 星良の反応にシグネは怪訝そうに眉を寄せた。シグネからすれば、ごく単純な論理的帰結なのだろうが、星良とシグネではこれまで生きてきた世界が全く違う。
 邪魔なら殺してしまえという感覚は、ごく一般的な倫理観を大事にしている星良にはついていけないものだ。
「人の命が関わることよ? いくら乗鞍が悪党でも短絡的に物事を処理したくないし、邪魔者だから消してしまおうなんてそれこそ傲慢よ」
 そんなことをすれば星良は乗鞍と同類になってしまう。
「星良の言うとおりだ、そう簡単にはいかないよ」
 祥太郎の同意に星良はホッと肩の力を抜く。祥太郎は星良の信頼に満ちた眼差しに、ちょっと困ったような笑いを返した。
「――心情的な理由だけじゃなくて、打算もあるんだけどね。だいたい乗鞍が俺たちが暴力的な手段を取ると予想してない、なんの対策も取ってないとは考えにくいよ」
 祥太郎は、もし自分が乗鞍だったなら、と前置きする。
「乗鞍はなにか特別な防御手段を持っていると考えた方がいい。それにそもそも星良と結婚したところで星良の権力をそのまま自由にできるわけじゃないんだ。なにかもっと奥の手みたいなものを隠してるはずだよ」
「で、それはなんなの?」
「それがわかってたら苦労しないって。とにかく今は、乗鞍の脅しに屈しないために、人質を取り除くことから考えないと」
「そいつは乗鞍の支配が及ばない場所までオレたちが連れ出すってことでいいのか?」
 オスカーが口を挟んだ。
「うん。そのためには大規模な輸送手段が必要になるね。なにせ人質の数が多い」
「加えて速度が重要になるわけだな。人質を移動してるってのを乗鞍に察知されたら、間違いなく妨害が入るからな――しかし、どんな手を使うんだ?」
「うーん、実は今さっき思いついたんだけど、もしかしたら金と人手と時間があれば、なんとかなるかも」
「そりゃ、そのみっつがありゃ、たいていのことはなんとでもなるだろうよ」
 祥太郎の言葉にオスカーが呆れたように返す。茅花姫が、うーんと首を傾げる。
「祥太郎さんの想定する“人手と時間”がどのくらい必要かわかりませんが、私たちが都合に一番苦労しそうなのはお金ですよねぇ……」
「資金は式島審議会から出してもらう。乗鞍は式島一族の人間だから、このリゾートを儲けさせるアイデアなら、審議会だって首を縦に振らざるを得ないはずだ」
 祥太郎はきっぱりと答えた。それまで無言で一同の意見に耳を傾けていた内親王が、かくりと縦に首を動かす。
「たしかに“式島家をさらに発展させること”に一致します」
 内親王の同意に祥太郎は自信を得たように説明を続ける。
乗鞍がこの島をどんなつもりで建設したかは別にして、高級リゾート地であることは間違いない。星良を脅迫するという計画のカモフラージュするためもあると思うけど、見たところ工事はけっこうしっかりやってるみたいだ」
「うん。あたしが見たかぎりでは、安作りなところはなかった」
 ここ数年ですっかり目が肥えてしまった星良の目からも、高級リゾートと呼んで差し支えのない仕上がりだった。現時点ではコストを掛けすぎのように思えるが、全体的に作り自体はしっかりしているし、各施設も充実している。
 集客の難問さえクリアできれば、採算は取れるはずだ。
「それから、乗鞍が大量輸送を不可能にしてしまっていることを逆に利用する」
「なにを?」
「この島に大量輸送ができるように作り変えてしまえば大量の客の誘致が可能になる。ようするに、このリゾートが儲かるっていうことになるはずだ」
「――困っている人たちも助けられるし、散財もできるっていうわけね?」
 パッと星良の表情が輝くのを見て、ようやく祥太郎が笑った。
「じゃあ、お金は審議会から引き出すとして、あと必要なのは人手と時間よね」
「人手は俺たちでどうにかするから、星良には時間を作ってほしいんだ」
「祥太郎たちの準備が整うまで時間稼ぎすればいいってこと?」
「うん。手段は問わないから結婚の返事をできるだけ先延ばしにしてほしい。その間になんとかやってみるよ」
「余裕を持って、最低でも一週間は延ばしたいところね……」
「ただ、向こうもそこまで悠長に待ってはくれないだろうから無理はしないで慎重に」
「わかった、任せておいて」
 まだ祥太郎のアイデアが審議会を通るかどうかすらわからないという段階で、自分がわくわくしているのに気づいて、星良はひそかに顔を赤くした。
 自分はもう小さい子供ではないというのに、祥太郎といっしょになにかやるとなるとが無条件に嬉しくなってしまう。遊びではないのだから気を引き締めていかなければ。
「じゃあ、なしのちゃん、俺の考えたアイデアを審議会に諮ってくれないかな――と、ちょっと待って。人手については先に確認しておいたほうが安全だな」
「ちょっと、というのはどのくらいの時間を示す単位でしょうか」
 杓子定規な内親王の返答に、祥太郎は面食らったように目を瞬かせる。
「え? えーと、じゃあ一時間後で」
「了解しました。本日二十一時三十四分二十六秒〇二に、審議会を招集します。所定の時刻までに確認作業を完了しておいてください」
「…………。不測の事態が起きた場合に備えて、あと三〇分ほど追加して」
「了解しました」
「じゃあ、みんな来て」
 祥太郎は三人の下僕たちを集めて、階下へおりていく。
「……」
 祥太郎たちの姿が扉の向こうに消えると、星良は取り残されたような気分になった。
 自分は別にやることがあるとわかっているのだが、なんだか仲間外れにされたような寂しさだ――いやいや、子供ではないのだ、きちんと自分の役割を果たさなければ。
「さて!」
 星良は気を取り直し、努めて明るい声をあげた。
 部屋に残ったのは内親王ひとり。
「ちょっと聞きたいんだけど……!」
 こういう漠然とした質問の相手には向いてないが、他に相手がいないので、星良としても他に選択肢はない。
「なしの、あたしたちは時間稼ぎ担当になったわけだけど、とりあえずなにをやったらいいと思う?」
「おそらく乗鞍はこちらが時間稼ぎをしてくると予測しているはずです」
「でしょうね」
「であるならば、乗鞍が星良に“もっと時間稼ぎしていて欲しい”“続けて欲しい”と思うようななにかをすればよろしいのでは?」
「――例えば、どんな?」
「式島機関のデータベースによれば、乗鞍は女性を好むとのことでした。過去に何度も女性がらみの醜聞を起こしていると記録にありますし、先刻の会見の際も若くて美しい女性が好きだと自白しています。これは乗鞍の弱点と見て間違いないでしょう」
 内親王の黒い瞳がきらりと光る。
「乗鞍厳に関する膨大なデータ、および我々の活動範囲がリゾート内部に限られている現状を鑑みるに、最も有効と思われる作戦は、たったひとつに絞られます」
「そのたったひとつとは……?」
「星良がプールに行って、水着姿で遊ぶことではないかと」
 室内に短いが重い沈黙が落ちた。
「…………」
「…………」
 星良は内親王の迷いのない表情に、多少の後ろめたさを感じつつ、尋ねないわけにはいかなかった。
「……もしかして冗談言ってる?」
 もっと複雑な作戦が提案されると思って身構えていた星良は、疑惑のこもった視線を内親王に向ける。内親王は微かに片眉をあげた。
「私は論理的な思考に基づいた結論を出しているだけです」
「え、そうなの? ごめん」
 星良は内親王の反応に慌てて謝る。
「だったら、もっとベタベタしたほうがいいんじゃないの? お酌するとか、えーと、その、おねだりするとか?」
「なるほど。他にはありませんか? 現状ではアイデアがたくさんあったほうが、より成功の可能性を高めると思われます」
「ええっと、腕組むとか……」
 星良は自分の知る限りの『男性に媚びる方法』を懸命に探してみたが、思ったよりも自分に引き出しが少ないことを再確認するだけに留まった。
「……だ、だいたい、そんな感じよ!」
「では、その方法で……」
「と、ちょっと待ってよ。そんなことできるわけないじゃない!」
 あんな男を相手にお酌だのおねだりだのするなんて、想像するだけでも鳥肌が立つ。内親王は無表情な美貌に奇妙な色を浮かべて星良を見つめる。
「――ですから、私は水着でプール案をあげたのです」
「わ、わかったわよ。非効率な会話をして、申し訳なかったわね」
「謝るようなことではありませんよ、星良。このやり取りは想定の範囲内です」
 静かに頷く内親王の超然とした物言いが腹立たしい。
「……じゃあ、なしの。あなたもスケベ親父が好みそうな露出の多い水着にしなさいよ。あたしが選んであげるから」
 星良の笑顔に内親王の表情が動いた。星良以外の人間にはまったくわからないだろうほんの少しの変化であったが、してやられたという表情が浮かぶのを目にして、星良はささやかながら溜飲を下げる。
 内親王は珍しく逡巡したように視線を彷徨わせ、目の縁を赤く染めて答えた。
「……可能ならば、上下貝殻の水着だけは勘弁していただきたいです。さすがにあれは動きにくいと思われますから……」
「んなもの選んだりしないから安心なさい!」
 照れて困ったような内親王の横顔にツッコミを入れて、星良は首を傾げる。
「……そもそも貝殻の水着って、オヤジが好むような水着なの……?」
「データにありませんのでわかりかねます。審議会に諮りますか?」
「……本気で言ってるの?」
「どう思われますか?」
 星良は内親王の二重の問いに白旗を揚げた。
「後生だからやめて」
「それでは塁人に意見を聞いてみましょうか」
「そっちもダメ!」
 どうせあの男のことだから、絶対にオヤジを悩殺するには最適とかなんとか、面白がって着せようとするに決まってる。

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